「どこかへ外出したい」「好きなことがしたい」というのが利用者の本音です。本来誰もが、自分らしい生活を送ることを望んでいるのに、現在の施設の生活では、あまりにも沢山のものが奪われ、そこにならされることで、自分らしさも薄れてしまっています。
私たちの施設では、利用者一人ひとりが自分の意志で最高の自分を創りだしていただけるよう、総合的な個別ケアを行っています。QOLを高める切っ掛けとなった取り組み、夢を実現するために行っている個別誕生会を中心として紹介いたします。
人生の現役で居つづける為に ~夢を叶えよう!~ の発表をさせて頂きます、岐阜県特別養護老人ホームサンライフ彦坂、発表者・機器操作の堀口恵と宮部八千代です。よろしくお願い致します。
「本当に自分らしい生活を送る事ができた。」、「この施設で暮らせて良かった。」と心から満足感を味わってもらえる事が、サンライフ彦坂全職員の思いです。私たちサンライフ彦坂では、利用者一人ひとりが自分の意志で最高の自分を創りだして頂けるよう、総合的な個別ケアを行っています。
その人らしさや個性を発見し、それを最大限に発揮した生活を継続できるよう支援する為に、私たちサンライフ彦坂では「おむつゼロ」・「個別誕生会」・「介護予防リハビリ」等の様々な取り組みを行っています。これらの取り組みは全てに関連があり、QOLを向上していく上で相乗効果があり、本日はこれらの取り組みの中でも大変重要な役割を持っている「おむつゼロ」と「個別誕生会」についてご紹介させて頂きます。
こちらのグラフをご覧下さい。平成17年度のオムツ使用率のグラフです。赤のグラフが日中帯、緑のグラフが夜間のおむつ使用率を表わしています。おむつ使用ゼロへの取り組み開始当初は、おむつ使用率は40%前後でしたが、8月以降の使用率は5%前後を維持しています。本日のオムツ使用者は100名中3名です。オムツ外しはQOL向上の第1歩です。
QOL向上の為の取り組みは、オムツ外しに留まらず、「今、何をしたいと思っているのか?」、「本人の望む生活・夢は何なのか?」を常に考え、その人らしさを最大限に発揮した生活を継続できるよう実践しています。
オムツの必要がなくなった事で、日常生活にも様々な変化が出てきました。
自分の意志をはっきりと伝えたいという思いが利用者をおしゃべりにさせ、感情表現が豊かになりました。そんな利用者の声を職員がしっかり傾聴し夢を実現するためにサポートすることでQOLが更に向上し、行動範囲が広がり外出の希望も増えました。そして恋をしている利用者もいます。
医務の視点からは、「おむつゼロ」を積極的に進めた事で、臀部の発疹や痒みが減り、皮膚疾患による臀部処置が減りました。それにより仮に再発しても治癒期間が短縮、更にトイレ誘導による移動や排泄行為が筋力アップにも繋がりました。当初は排泄介助に職員2人対応でしたが、筋力アップにより立位がとれたり、支えていれば自分でズボンを下げられるようになりました。トイレ誘導により、尿意・便意の復活した利用者がどんどん増えています。
こちらのグラフをご覧下さい。このグラフは臀部の処置日数を表したものです。おむつをつけていた第1回目の頃は、臀部の処置が完治するまでに64日間もかかりました。この期間ではおむつによるムレが痒みとなってかきむしり、その結果、創部を悪化させ、完治するまでに時間がかりました。そこで第2回目は紙パンツでトイレ誘導を行い、処置は15日間で完治しました。第3回目では、布パンツに変更しトイレ誘導を積極的に行い離床時間を増やした事で、臀部の痒みも減り、7日間という短期間で臀部処置を完治する事が出来ました。皮膚疾患の予防・早期発見にも力を入れている事でQOLの向上に繋がっています。
次に「個別誕生会」について紹介させて頂きます。「個別誕生会」とは月ごとに、集団で誕生会を開いてお祝いするのではなく、個々の利用者が、どんな誕生日を迎えたいか、誰と過ごしたいのか、何をしたいのかを、本人のニーズの聞き取りを中心とし、生活歴からの読み取り、家族からの意見を取り入れ、その人その人に「夢が叶った!」と満足していただける誕生日を迎えて頂いています。
「個別誕生会」の一連の流れを紹介します。
- 利用者のニーズを聞く
- 各部署と相談・連絡。介護員だけで決めるのではなく、看護員、栄養員、相談員、事務員にも相談・連絡をし、起案を作成する
- 決裁を得る
- パソコンを利用し全職員で情報を共有する
- 実施、報告
誕生会が楽しみになりQOLの向上へと繋がっていきます。
それでは実際の様子をご覧下さい。
「仲良しの人と一緒に出かけたい」という希望で、仲良しの利用者と喫茶店に行き、大きなケーキを食べました。昔よく、旦那様と長良川の河川敷で鵜飼いを見た という思い出話をされていた為、夜の鵜飼い見学に行きました。途中のスーパーで好きなお弁当とビールを買い、鵜飼いを見ながら乾杯をしました。「せっかくの米寿のお祝いだから、飛騨牛が食べたい」と専門店に行き、お腹いっぱい飛騨牛を頂きました。「帰ったらみんなに自慢しないとね」と満足そうに話されました。「家族と家で過ごしたい」という希望で、自宅でゆっくりと過ごし、付近の散歩をしました。終始表情も穏やかで、家族は「今後も継続的に散歩・外出をしていきたい」と話されました。
その他の誕生日会には、日帰り温泉旅行に出かけたり、家族団らんの誕生日会で記念撮影を行ったり、100人に100通りの誕生日会を行っています。
個別誕生会を実施する事で、次のようなQOLの向上が見られました。利用者同士の親睦が深まり、お互いの事を気遣う姿が見られる様になり、洗濯物たたみを「これ私の仕事だから職員さん取らんといて」と積極的に取り組む姿が見られます。「頼りにされている」という意識付けにより、充実した日常生活を継続する上で、大きな支えとなっています。個別誕生会を含む外出については、利用者から「今度の外出はいつ?」、と次回の予定を職員に積極的に訪ねたり、外出等に合わせて自分の予定をたてたりと、生きる希望へと繋がっています。地域参加のひとつとしてサンライフ彦坂では、継続的な保育所への訪問を行い、園児と一緒に歌を歌ったり、昔の遊びを伝えながら一緒に遊んだりする活動を行っています。
これらの地域参加を継続する事で、「誰かを喜ばせてあげたい」という、ボランティア精神をも作り出しています。
ここで事例を紹介させて頂きます。対象者:Kさん、女性60歳、要介護4、既往歴は脳出血、右半身及び右顔面軽度麻痺、移動手段は車椅子。人に接する事、行事に参加する事が好きではなく、無理に進めると落ち込んでしまう事がある。食事の時しか起床せず、一日の大半を居室で一人で過ごし、鬱状態でした。
ところが現在では、介護度は要支援、移動手段は杖歩行になりました。誕生会等による外出の回数を重ねるにつれておしゃれに目覚め、日常生活も笑顔になり、「外出は2ヶ月に1回にしてほしい」「カラオケに行きたい」「服を買いに行きたい」とケアプランを自分で計画するようになりました。日常生活において自分が「役に立っている」、「頼りにされている」という意識をもってもらえる様に、職員が支援・援助してきた事がこの結果を導きました。
利用者の皆さんが、自己選択・自己決定することにより自分の夢を実現し、人生の現役で居続けられるようにサポートを行う。職員が利用者一人ひとりのニーズをより深く理解し、最終的な目標である「その人らしい生き甲斐や夢のある生活」を送って頂く。利用者の新しい事に気付き、速やかにケアプランに反映・実践していく。ITの活用によって全職員間で情報を共有し、利用者一人ひとりに総合的な援助が出来るように力を入れていく。利用者の皆さんが、施設の中だけに限らず、地域や社会に積極的に参加出来る生活を送って頂けるよう支援・援助していく。我々は生きていくことを味わう個別ケアを実践していきます。
以上で発表を終わらせて頂きます。ご静聴ありがとうございました。

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