社会福祉法人豊寿会:サンライフ彦坂

個別ケアを高める多職種連携について

平成22年度東海北陸ブロック老人福祉施設研究大会<愛知・名古屋大会>(平成22年6月23日)でサンライフ彦坂が研究発表した内容を公開します。

20100623nagoya.jpg高齢者は、毎日の生活における健康への不安や家族に心配かけたくないという強い思いと、悠々自適に"ぼちぼち"と生活が出来たら嬉しいという思いを持っています。この思いを支える基盤として、次のことを課題としました。
・利用者が「やりたい」と思っていることを実現する為に必要な健康管理と職員連携を実施することで、「できるんだ」という思いを引き出し、目的を持った楽しい生活をおくって頂くこと。
・情報共有のシステム化、途切れることのない連携で、本人・家族に安心していただけるサービスを提供すること。

岐阜県岐阜市から参りました、特別養護老人ホームサンライフ彦坂 看護員 高橋由佳です。よろしくお願いいたします。
個別ケアを高める多職種連携にいて 情報共有で安心サービスを提供する を発表させていただきます。

はじめに、日々関わりを持っている高齢者の思いを整理してみました。
高齢者は、日常生活での思いとして、毎日の健康への不安や家族に心配かけたくないという強い思いと、悠々自適に"ぼちぼち"と生活が出来たら嬉しいという思いを持っています。
施設に入る入らないは関係なく、年を取ることで感じる自然な思いではないでしょうか。
施設で生活しているから特別ではなく、高齢者の気持ちに寄り添い支える環境が必要です。

この思いを支える為に必要な環境は、世代間交流・家族交流、飲食・買い物・レジャー、近所付き合い、趣味活動といった、在宅生活で当たり前に行ってきたこと全てです。

そこで、この思いを支える基盤として必要な、次のことを課題としました。
利用者が「やりたい」と思っていることを実現する為に必要な健康管理と職員連携を実施することで「できるんだ」という思いを引き出し、目的を持った楽しい生活をおくって頂く。
情報共有のシステム化、途切れることのない連携で、本人・家族に安心していただけるサービスを提供する。
この二つの課題をクリアすることで、施設で生活するすべての高齢者にとって充実した日常生活を提供することができます。

施設だから我慢させたり、あきらめさせるのではなく、専門職が集まっている集団だからこそ、口では言えない心の不安までつかみ取って対応することができます。介助を必要とするようになった高齢者が「家族の負担になるだろうから言えなかった」というような、本当にやりたいことも上手に引き出して生活につなげていく事ができるはずです。
本当は家族と一緒にお墓参りに出かけたくても、世話をかけると思うと自分から留守番をすると言い出すようなことは日常的にあります。プロ集団である我々が関わることで、「ガマン」で終わっていたことを実現していくことが可能なのです。

具体的な取り組みとして、
・やりたいことを発見、作り出す
・家族との連携、積極的な係わり
・機能訓練としての位置づけ
・ケアプランへの反映
・全職員での喜びの共有
・実施後の係わりの有効活用
・ITの活用
といったことを行っています。具体的にその内容をご説明させていただきます。

利用者の皆さん一人一人に「何がやりたい?」と声をかけると、最初に帰ってくる言葉は「何にもせんでええ。あんたらに任せるわ。」ということがほとんどですが、生活歴を知り、長く時間をかけて関わりをつくることで趣向も読み取れるようになり、信頼した職員との会話の中で「温泉に行きたい」や「自分の服を自分で選んで買いたい」といった思いが出てくるようになります。
やりたいことを発見、やりたいことを作り出す関わりの中から、関連した行事としてできあがったものを紹介します。
・一人一人の誕生日に望みのお祝いをさせていただく個別誕生日会。
・施設の入所者が保育所への訪問を行い孫・ひ孫の年代との交流をする保育所訪問。
・毎日の体作りにダンベル体操、嚥下体操
・買い物、外食、季節の外出
・趣味活動、お茶、お花、絵手紙、季節の工作、季節の保存食作り、お参り

これらの企画が単独で成り立つのではなく、日常生活に欠かせない取り組みとしての「おむつゼロ、介護予防リハビリ」と相乗効果で利用者の日常生活を作り上げています。
特に、ニーズのつかみ取りと実施で効果の上がる「個別誕生日会」、日常生活の基礎となる「おむつゼロ」、身体機能の維持向上に欠かせない「介護予防リハビリ」を大きく書かせていただきました。
これらの企画が相乗効果で利用者の心を解きほぐし、本当の気持ちを聞き取り対応することで、充実した日々の生活を目指すことができます。

個別ニーズの拾い出しをする時には、
・生活歴からの特徴の拾い出し
・本人・家族からの聞き取り
・日常会話・行事などの関わりからの発見
・アセスメント・モニタリングの中からの発見
これらの全てを職種間で連携して行うことで、日常生活の活動の幅・種類をアレンジして、活動の選択、参加を促すことができるようになります。これがケアプランの内容に反映されることで、ご本人とご家族にも納得いただけるサービス内容を作り上げて行くことができます。明文化してケアプランに落とし込むことは、ケアプランサイクルの中で個別ケアを検討するチャンスを持つことにもなり、継続性のある関わりを作り出すことができます。
ニーズの拾い出しから実施と報告を行う職員にとっては、大変大きな充実感と喜びを持つことが出来ています。行事への関わりは、新人職員に福祉の仕事の楽しさを実感してもらう為にも効果がありました。

拾い出しをした個別のニーズを実現する為のプロセスを確認します。
計画と実施に必要な要素は
・実施に耐えられる健康状態、やってみようというモチベーション
・必要な物品、必要な支出が可能か
・家族の関わり、家族への報告
・職員の積極的な関わり
これらがバランス良く整うことで、ようやく実現できる環境となります。
健康状態などの理由により、今実施しなければ実施出来なくなってしまうような場合もあります。利用者がやりたいと思った時に実現できる柔軟なシステムも必要です。

サンライフ彦坂では、一つのニーズの拾い出しから実施まで、一つの流れに沿ってシステム化されています。
その流れを紹介いたします。
・ニーズを聞く
・各部署と相談連絡
・起案作成
・電子決済
・全職員の情報共有
・実施
・報告
この流れに沿って系統だって進行することで、安心して企画を実施することができます。自分のニーズが実現する流れを実感することは、利用者に取っての楽しみとなり、日々のQOL向上するという良いサイクルができあがっています。この流れを継続して実施することが重要です。

これらの取り組みは、起案書の中にて機能訓練としての位置づけを行っています。
日常の生活の中で、本人が一番実感できる内容とするため、
・出来るようになりたいことを実現する取り組み
・やりたいこと、本人が楽しみに出来る内容
・健康維持への働きかけ
・モチベーションの維持向上
・日常生活動作の維持向上
といった内容を取り上げています。

行事等を実施した後の関わりも重要です。
外出などから帰ってくると
・やってみてどうだったか確認する
・またやりたいか確認する
・次は何がしたいか確認する
・買ってきた服を誉める
など、職員からの積極的な関わりをすることで、取り組みの効果を上げていきます。
実際、初めての外出から帰ってくると「今度は墓参りに行きたい」「来年の誕生日にはウナギが食べたい」など、具体的な回答が帰ってきます。ニーズがハッキリすると、次の取り組みへのやり甲斐も出ます。

これらの取り組みから、特徴的な3つの事例を紹介します。

「事例1、笑顔のある生活に変わるまで」
 入所時 69歳 女性 介護度4
 くも膜下出血後遺症、右麻痺、拘縮、無表情、発語なし、
 立位不安定、移乗介助、車いす自走
 ↓
 入所後はリハビリを通して、意欲を引き出す声かけを行い、夫が毎日面会にきて一緒にサポートしてくれました。
 職員の関わりだけでなく、夫が深く関わりを持たれることで効果が大きく、
 ↓
 半年後には、言葉は少ないが自分の気持ちを示すことが増え、笑顔が多くなりました。
 ↓
 しだいに立位安定し、歩行訓練、発語訓練も平行して行われるようになっています。
 ↓
個別誕生日会には、職員付き添いでご主人と一緒に外出、積極的に買い物をし、食事に入ったうなぎ屋さんでは、他の客を意識してフォークを使って食べる姿があるなど、日常生活に反映できそうな発見もありました。
夫は、在宅でも一生懸命世話をしていた経緯があるものの在宅介護に限界を感じていました。入所により施設という場所を上手に活用していただく事で、明るく楽しい関わりをしていただくことが出来るようになりました。以前は無表情であった奥様から表情が帰ってくるだけでも大変嬉しいことのようです。

「事例2、意欲、思いをケアプランにのせて!」
まさに題名の通り「ケアプランにこれを入れて!」という思いを引き出した事例です。
 81歳 女性 介護度4
 老人性精神病、糖尿病、歩行困難、車いす介助、食事半介助、(以前は対人拒否、しゃべらない)
 入所当初は、他人を全く受け入れられずコミュニケーションを取ることが出来ない状態でした。
 ↓
 あきらめることなく継続して意欲を引き出す声かけ、レクへの参加を促し、丁寧に声を引き出せる関わりを継続することで、
 ↓
 特定の職員に対して心を開き、欲しいもの、食べたいもの、行きたいところをはっきりと伝えていただけるようになりました。
 これらのニーズを、最初に個別誕生日会にて実現することで、外出の楽しさを思い起こすだけでなく、希望が実現できるんだと前向きな思いに変化しました。
 ↓
 ケアプランに定期的な外出を盛り込むなどすることで、モチベーションの維持向上と身体機能の改善を実現しました。
 ↓
 今では杖での自立歩行、食事は自力摂取、周りの人への配慮をして心配で職員に声をかけてくれるなど、どの職員に対しても心を開き会話を楽しむなど様子が一変しています。食事についても、糖尿病が悪くならないように、外で好きな物を食べるためにダイエットを行ったり、看護師・栄養士と本人とで相談して食べたいものを選択するなど、生活意欲が向上して生き生きとしています。介護度は○まで変化しました。

「事例3 最後の思いを実現したい」
こちらの事例は、慢性関節リュウマチによる自らの身体レベルの低下を理解しながら、妥協することなく日常生活を送ってきた方の内容です。
 82歳 女性 介護度5
  慢性関節リュウマチ、高血圧、狭心症
  片足切断、関節の強度の痛みと変形、電動車いすにて自走できていたが、操作が不安になってきた、 その他全介助
  はっきりとした思いがあり、意思表示可能
 ↓
 レベル低下、食欲低下、全般的な体力低下が著しく、焦り・不安・苛立ちが強くなる
 この状況を本人自身が一番強く実感していらっしゃいました。
 ↓
 そして、個別誕生日会の計画に当たり、一つの最後の望みが出てきました。
 『ふるさとの墓参りがしたい』
 身体的な状況もあり、もう何年も前から墓参りには行ったことがありませんでしたが、今行かなくては次には行けないという本人の強い思いと、それをサポートしたいという職員の思いから、個別誕生日会に遠距離の墓参りを企画しました。
 ↓
 個別誕生日会の実施には健康管理が欠かせず、Drの判断を確認の上、身体状況と天候を考慮しての決行となりました。
 ↓
 急変に備え看護員と相談員が付き添いを担当、高速を使用し片道約2時間の移動、体調を考慮し多く休憩を入れるなどしましたが、日常介護での身体の痛みも大きくなっていることを考えると、車での移動は相当な負担であったはずです。
 墓参り、親戚との出会い、思い出の町を訪れる事で、痛みも忘れるほどの喜びであったようです。
 車中から帰所後も、痛みの訴えよりも、墓参りにいってこられた事への喜びで、話すたびに涙があふれてくる状況でした。
 疾病の状態からも看護員としての関わりが多く、深い信頼関係を築くことが出来ました。

お墓参りの時の写真です。
お墓を見つめるその顔は、穏やかで優しい微笑みでありながら涙を浮かべている様子でした。
この一時がご本人にとって大切な時間であったということ、その時間をサンライフ彦坂のスタッフの力でサポートできたことがとても嬉しく思います。

これらのすべての内容を把握し、各部署が連携してケアプランサイクルに乗って業務を行うためには、不規則勤務の職員同士でも確実に意思疎通できるシステムが必要です。サンライフ彦坂では、これら行事の起案や日常処遇の記録は全てIT化されており、系統立った流れの中で管理が出来るようになっています。
・利用者処遇関連
 ケアプラン、処遇経過記録、健康状態について一つのシステム上で管理されており、多職種間で共有して連携が図れるようになっています。職種別に必要な情報を整理して表示するだけでなく、日々の記録を活用して、一手間かけるだけで日常の状況を定期的にご家族へ報告することが出来るなどの特徴があり、ご家族からも好評をいただいております。
・職員間の情報共有システム
 こちらにはサイボウズというシステムを使用しています。スケジュール管理、起案・実施報告・物品の購入・研修報告などの電子決済から、日常的な業務連絡や全体での統一事項を回覧して全職員が確認できるなど、すべてが一つのシステム上で管理できるようになっています。

この二つのシステムを用途に応じて明確に使い分けることで、必要な情報共有が達成されています。その上で、職員同士が会話することで連携の質を高めることが出来、今では必要不可欠なシステムです。
・外部への情報発信
 外部への情報発信にも重要な意味があります。
  ホームページで施設内の出来事を紹介するブログを展開
  月刊でのチラシ作成、多くの人への配布
  施設内での日々の取り組みを知って頂く努力を継続することで、より一層ハッキリとニーズが聞こえてくる効果があります。「あれがやりたいから、これがやりたいから行ってみようか」という声が聞こえてくるのも、情報発信をし続けているからこそだと感じています。

これらの活動から見えてきた成果と評価についてまとめました。
・利用者自身が、次に何をやりたいかを考えるようになることで、ニーズの把握がしやすくなった。
・ご家族との関わりが多くなった。良い変化や楽しみなことがあると、ご家族と職員と一緒に喜ぶ機会が増えた。
・高齢者の日常生活を支える生活場所に於ける看護の役割を明確に持つようになった。
・実施して楽しかっただけでなく、後の日常生活への反映を多職種で検討するようになった。
これらの成果は、利用者の変化、家族の変化、職員の変化を良い方向へ生み出してくれています。

今後の課題としては、
・利用者の外出が増えることで、小まめな職員の調整が必要である。
・思った成果が得られないこともあり、利用者、職員のモチベーションを落とさないフォローアップが必要である。
・機能訓練は、非常に幅の広い意味があり、理解して対応していけるように職員教育を継続し続ける。
といったことが上げられます。細かなニーズに対応するためには、そのニーズを拾い上げられる職員のセンスと、柔軟に実施方法を考えて実践できる技量が必要です。
これを組織として求め続けることで、我々が理想とする利用者本位の高品質なサービスが実現します。

今の時代には、介護と医療が連携した高齢者との関わりにより、充実した余生を過ごせる環境を提供することを求められています。最高の終の棲家を提供していく為、職員の努力を継続します。
明るく楽しく元気の良い場所で有り続けます。

これにて、特別養護老人ホームサンライフ彦坂「個別ケアを高める多職種連携について」の発表を終わらせていただきます。ご静聴ありがとうございました。

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このページは、hasebee@編集長が2010年6月25日 12:45に書いたブログ記事です。

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