社会福祉法人豊寿会:サンライフ彦坂

利用者の思いを叶える取組み

平成22年度「介護の日」フォーラム(平成22年11月11日)でサンライフ彦坂が事例発表した内容を公開します。

「介護の日」でユニークな取り組みを発表―厚労省などがフォーラム
厚生労働省と全国社会福祉協議会は「介護の日」の11月11日、東京都内でフォーラムを開催し、厚労省が募集した介護職員によるユニークな取り組みが紹介された。介護従事者や学生など、主催者発表で600人以上が来場した。
「介護職員による『ユニークな取組み』発表会」では、厚労省に推薦された62施設・事業所のうち4つが選ばれ、それぞれの取り組みを発表した。(中略)
サンライフ彦坂(岐阜市)の特別養護老人ホームで働く服部誠司氏は、利用者それぞれの希望をかなえる「個別誕生日会」で、子どもとの交流を望む利用者には職員の子どもを連れて来ることなどを紹介した。服部氏は、誕生日会を通して利用者が最も望んでいることを理解し、会が終わった後に継続して実現していくことが重要だと述べた。( 2010年11月11日 23:18 キャリアブレイン )

岐阜県岐阜市から参りました、特別養護老人ホームサンライフ彦坂 介護員 服部誠司です。よろしくお願いいたします。

当施設は、法人理念である「誠実と笑顔で社会に貢献」を実現するため、平成8年の開設以来、地域に開かれた施設を目指し、「夏祭り」「敬老祭」「ケアフェスタ」を始めとする 地域参加型の行事を行っています。これらの行事を通じて、老人福祉施設の役割や 高齢者の方々についての理解を深め、施設が身近に感じられるよう実施しています。

それでは、利用者の思いを叶える取組みを発表させていただきます。

はじめに、日々関わりを持っている高齢者の思いを整理してみました。
高齢者は、老後の生活での希望として、健康で暮らしたい、家族と仲良く暮らしたい、悠々自適に自分のペースで暮らしたいという思いを持っています。
施設で生活しているから特別ではなく、高齢者の気持ちに寄り添い支える環境が必要です。

この思いを支える為に必要な環境は、世代間交流・家族交流、飲食・買い物・レジャー、趣味活動、近所付き合いといった、在宅生活で当たり前に行ってきたこと全てです。

そこで、この思いを支える基盤として必要な、次のことを課題としました。
個性ある「心」を大切にし身体に不自由があってもやりたいことを実現できる 環境を提供する
職員の共通認識を深め、「心」を共有したサービス提供ができる環境作りをする、の二つです。

この課題を元に 利用者の思いを叶えるため 実際に行ったのが
・思いを叶える 個別誕生会
・個性を支える 排泄改善
・温かく支える 職員連携
といった、内容です。 
個別誕生会を中心に説明させて頂きます。

個別誕生会とは、個々の利用者が、どんな誕生日を迎えたいのか、誰と過ごしたいのか、何をしたいのかを、本人との会話や、昔の思い出話を参考にしたり、家族から 教えてもらうことで誕生会を企画し、一人ひとりに「夢が叶った」と、満足していただける誕生日を迎えて頂く取り組みです。100人の方に100通りの誕生会が行われており、身体状況や本人の希望により施設内外自由に選択して誕生会を実施しています。

今までに開催した個別誕生会では、
なじみのお店への外食、買い物、温泉、ビール、鵜飼い船遊覧、その人のためだけのピアノコンサート、観劇、お花鑑賞、家族で正装しての記念撮影などがあります。
実際の誕生会の様子を写真で紹介します。

職員の子どもと触れ合い、抱いているときの写真です。
普段口数が少なく 一日の大半を 目を閉じて過ごすことが多い方です。子どもが大好きで、職員の子どもと触れ合う誕生会を計画。子どもを見ると穏やかな眼差しでみつめ「かわいい」とはっきり声に出し、その表情はとても生き生きとし、両腕にしっかりと抱き抱えていました。子どもと触れあう時間のなかで、普段見られない表情や 動作、言葉があり、子どもはその場にいるだけで自然と周りの雰囲気を温かくしてくれます。

近所の喫茶店へ外出したときの写真です。
普段は食事の時間以外は自分の部屋で過ごすことが多い方ですが、大好きなコーヒーの話になると「コーヒーを飲みに出かけたい」と話が弾み、喫茶店ではメニューを見て「私は甘い物が大好きで、特に洋風のものが好き」とコーヒーとケーキを注文。昔の思い出話をしながら、落ち着いた雰囲気のなか、帰りの車内では「楽しかった」「気分が晴れた」という言葉と「次は お買い物に出かけたい」という 新たな希望を聞くことができました。

娘さんと一緒に奥様のお墓参りに行った時の写真です。
本人の、「おっかぁの墓参りにいきたい」という希望を叶えるため、家族と相談、計画しました。誕生会当日、娘さんに会うと「みんな元気にしとるか?」と家族を気遣う姿があり、両手を合わせ真剣な表情でお参りをしました。「久しぶりに行けて嬉しかった、またお墓参りに来たいな」と笑顔で話されました。目の不自由な方ですが家族に手を引いてもらい、一緒に本人の思いを叶える関わりができました。

ショッピングモールで似顔絵を描いてもらいプレゼントしました。
外出先で似顔絵コーナーの前を通りかかると、周りに飾ってある絵をじっと見つめる姿があり、似顔絵を描いてもらうか尋ねると笑顔で頷き書いてもらっている最中、絵描きさんに年齢を聞かれ93歳と答えると「僕が描いた中で最高齢です、ありがとうございます。」と温かい会話がありました。
特徴がつかめていて、上品な雰囲気が伝わってくる絵を じっくり眺め、職員が「そっくりですね」と声を掛けると嬉しそうに微笑む姿がありカタチに残る思い出の品ができあがりました。

様々な企画を実施することで、笑いあり、うれし涙ありの時間を提供し、利用者、家族からも喜びの声を沢山頂いています。

個別誕生会の外出と施設内で行った回数をグラフにしたものです。青が外で行った誕生会、赤が施設内で行った誕生会の回数です。「自分の行きたいところへ外出したい」という利用者が半数以上あることが分かります。個別誕生会を継続実施することで、利用者の喜び、笑顔、職員の達成感、充実感を引き出し、心と心のつながりを深めています。

行事等を実施した後の関わりも重要です。
外出などから帰ってくるとやってみてどうだったか、またやりたいか、次は何がしたいかお聞きするなど、職員からの積極的な関わりをすることで、取り組みの効果を上げています。
個別誕生会、その他各種行事、日々の活動が全て相乗効果で力を発揮し、利用者の思いを行動に変えていけるよう関わっています。

利用者の思いを叶えるためには、利用者自身のモチベーションが高くなくてはいけません。そのために、必要だったのが個性を支える排泄改善です。
私達にとってトイレに座って排泄することは当たり前のことですが、年を重ねるとこの当たり前の動作が難しくなってきます。オムツを使用することで気力、個性を失うことが多くあります。不自由になっても排泄を維持・向上することは個性を支え、望みをもつための基礎として大切なことです。高齢者の本当の思いをつかみ取ってみると、
トイレの心配なく 外出したい
外出するのに オムツは していたくない
恥ずかしいから 失敗したくない
人の世話になりたくない、自分で行きたい
出来ないところだけ 助けてほしい
自分のしたい時に 連れて行ってほしい
オムツは邪魔で 動きにくい、蒸れるからイヤだ
オムツの中で おしっこなんかできない
というように、年を重ねても「トイレで排泄したい」という思いは変わりません。やりたいことを実現しようとするモチベーションを、高く持ち続けるためには自然な排泄の出来る生活を作り出し、自信を持ってやりたいことが出来る支援が欠かせません。サンライフ彦坂ではオムツを使わない介護、排泄改善を継続していることが、利用者の外出意欲や何かをしたいという意思表現に繋がったと実感しています。

利用者の思いをかなえる為には、利用者を温かく支える職員連携が必要でした。
中心にあるのは利用者、家族であり、それを温かく支えるのが職員です。各職種の職員は利用者、家族をサポートするために存在しています。利用者、家族の笑顔を引き出すためには、これら職員の連携が欠かせません。顔と顔、目と目を合わせて、話し合い、互いに納得し、目的を共有し、心と行動が伴った活動をすることで、利用者を温かくサポートすることが出来ます。これらの考え方が利用者の思いを叶える取り組み基盤となっています。

思いを叶える取組みから、得られたものについてまとめました。
その場所でしか見られない 喜び・笑顔
普段見られない一面に 出逢えた
家族の安心感、笑顔に繋がった
新たな発見が 職員の喜びになった
期待以上の成果が 利用者から 返ってくることで、職員のやりがいが育った
その人を、より深く知ることができた
次の企画が 楽しみになった
これらの成果を実感することで、利用者の喜びだけでなく、職員のモチベーションアップにつながりました。個別誕生会をきっかけとして、今では日々の生活の中にも利用者の思いを叶える取り組みが組み込まれるようになっています。

思いを叶える取組みからは、沢山のものが得られます。その中心が利用者、家族、職員の心の繋がりでした。心の繋がりがあってこそ個性を活かした、日常生活をサポートさせていただくことが出来ます。これからも思いを叶える取組みを、精一杯継続していきます。

最後に、サンライフ彦坂で行っている新規職員研修の様子を、ビデオを使用して2分ほどでご紹介致します。利用者の思いを叶えることが出来る福祉職員が持っている楽しい雰囲気・モチベーションの高さをお伝えできればと思います。
理事長からの理念の伝達から始まり、先輩職員からは、シーツ交換、移乗介助、排泄介助、食事介助、入浴介助といった基本的な介助の知識と技術を伝授されます。
知識に付いては、コツやポイントなどを含め、独自にまとめた資料を使い、技術については先輩職員が実演しながら、細かく説明をした上で、できるようになるまで事細かに指導を受けることができます。
「利用者の思いを叶える取組み」を支えているのは、職員の知識・技術・心です。全ての職員が、知識・技術のラインを共通認識し、身につけることが、我々の仕事には 欠かせません。
基礎ができてこそ、笑顔で楽しく仕事をすることができます。

毎日楽しく行っている ダンベル体操、クリスマス、忘年祭、夏祭り、アイディアいっぱいの新人お披露目会、笑い溢れるコミュニケーション研修、1年を通して行っている行事も、この基礎があってこそ、全ての人を笑顔にする力を発揮します。
たくさんの仲間と共に、利用者の思いを叶える楽しいサービスを提供していきます。

以上で発表を終わらせていただきます。ご静聴ありがとうございました。
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このページは、hasebee@編集長が2010年11月17日 09:38に書いたブログ記事です。

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